自然に囲まれたNY北部に住む日本人が、現地の習慣や価値観等、日本とのあらゆる違いを紹介します。アメリカ留学、移住、旅行等、アメリカに興味のある人向けです。

日本での思い出の店が閉まると知った時

日本の両親の実家近くにあるデパートが、来月閉店する。私が生まれる前からそのデパートはあり、小さい頃からよくそこで買物をし、多くの思い出がある。母がその寝具エリアで勤めていた頃、小学校で放課後まで友達と遊び、そしてその寝具売場の母に会いに行き、一緒に地下階で買物したり併設のうどん屋でご飯を食べさせてもらったりした。親友の母がそのうどん屋の従業員だったり、高校生になり当時の彼女がそこでバイトをしていて、よく食べに行ったりもした。
最上階にある中華料理店で、北海道セットなる料理を食べた際感動し、北海道ではこんな料理が普通なのかと思い、親にせがんで毎週連れて行って貰うのが楽しみであった。
TVゲームのドラゴンクエストの発売日や、行きたいコンサートのチケット発売日は、そのデパート前に朝早くから並んで買った記憶もある。母はいつもそこで私の衣類、靴、おもちゃ、書籍などを買ってくれ、家電や寝具もたいていそのデパートで買っていた。
小学5年生の時、週末に友達だけでそのデパートに行くと、担任教師にたまたま出くわし、子供だけで来るなとどつかれたこともある。初恋の恋人に誕生日プレゼントを勇気を出して初めて買ったのもそのデパートだ。
たくさんの思い出があるだけに、日本へ里帰りする時はいつも、そのデパートにも行って買物をしたものだが、閉店とは悲しい。聞けば、郊外に大型ショッピングセンターが出来、大半の人がそちらに流れたためと言われる。
同様に、家の近くの中華料理屋も閉店していた。それが分かった時は「えっ!」と声を出してしまった。数年前に訪れたのが実は最後だったのか、と思いをはせた。小学校低学年に、スイミングスクールの帰りに親が連れて行ってくれ、水の塩素で目が赤くなりながら、店内に流れる演歌が独特の雰囲気を出す中食べたのが最初で、渡米直前まで数えきれない程通った。そこの餃子と長崎ちゃんぽんはいまだ私の中で世界最強の味である。
海外に住む者としては、そうそう簡単に帰る訳にもいかないので、より歯がゆい。里帰り時に閉店してしまっていたと知るのもつらいが、来月閉店すると分かっていても帰られないのもまたつらい。海外永住する人には、同じような思いを抱く人がいるのではないだろうか。閉店するのが分かった上で、せめてもう一度そのデパートに訪れ、買物とともに、昔の数々の思い出の場所に行き納めをしてみたいものだ。