アメリカで英語を話す 1 (渡米後すぐの私の英語 )
まず、日本の学校で習った英単語の多くが、アメリカでは使われていなかった。例えば「~にもかかわらず」はdespiteと習ったから話してみたものの、は?と言う顔をされた。そのためその意味で用いる別の語や類似表現を第一義として使うよう、彼らの会話から覚えなおす作業が頻繁に発生した。学生時代に必死に覚えさせられたのにアメリカ人が使わないとは何だよ、とがっかりしたものだ。
次に話すスピードが恐ろしく速く感じた。日本で15年学んだし、家庭教師として教えるくらいで多少の自信があったが、渡米した瞬間からそのおごりは完全に砕けた。アメリカ人が何言っているのか聞き取れないのである。まるでわざと早口で話して嫌がらせしているのか、と勘違いするほど、物凄いスピードで英語を話している気がして、当初恐れに似た感情を持ったのを覚えている。学校や受験用英語では聞き取りや英会話の必要性がほとんどなかったため、それは当然であったし、妻が私のためにいつもゆっくりと話してくれていたためそのスピードに慣れていたためかと思う。
そして、ほぼ完全な英語のみの生活を送るのに当初四苦八苦したものだ。当然だが、英語を聞いて英語で考え英語で言い返し、日本語での会話並みにそのリズムを途切れずテンポよく行うのは、ほぼ学校英語のみで渡米した私には高すぎる作業だった。
そのため、英語での会話のキャッチボールが出来ないため、言っていること言いたいことが伝わらない。質問され何度聞き返してもまだ分からない。例え分かってもすらすらと返答できない。映画が理解できない、新聞が読めない。そのため恥ずかしながら、アメリカ人と会話をしても、妻を連れ添い、その話を妻に噛み砕いてゆっくり再説明してもらい、英語による英語の通訳をしてもらうという、情けない時期も渡米後しばらくあった。次回に続く。