日本語レッスンにユニークな生徒が来た話 その2
当初私は、彼女自身が全く日本語が分からなかったので、日本語の文法や熟語単語をせっせと教えることは難しいだろうから、日本や日本語を楽しみながら慣れ親しんでもらうような簡単な内容にしたらどうか、と提案した。
彼女も同じ考えだったらしく、文法は超基本的なことにとどめ、それらを簡単なゲーム方式にて聞く話すの能力を養わせ、その他に日本文化や今の日本で流行っているものなどを紹介し、そして日本のアニメや今人気の歌を字幕つきで時々見せるような授業方式にすることにしたようだ。
同時に私はけん玉や将棋の駒、カルタ、招き猫の置物、扇子、こま、日経新聞、日本語のフリーペーパー、英語による日本の百科事典のほか、幼児向け絵本、少年ジャンプ、浴衣、下駄などアメリカ人高校生が興味を持ちそうな物を彼女に貸したり、高校生が好きそうな英語字幕つき日本アニメのDVDを貸したりした。
日本のクラスを希望した高校生の大半は、アニメに興味がある者で、残り少数は簡単に単位を取れると見込んだ者だったらしい。当初彼らの多くはすでに彼女より日本や日本語をよく知っていて、私が最初に彼女に教えたあいさつで使う日本語を、彼女がクラスで教えると、発音が下手だ、と突っ込まれ、生徒の方が流暢に話すので恥ずかしかったらしい。
そこで私は何度もゆっくりと彼女に日本語を話し、基本的な指示語、形容詞、動詞と、数字、時刻の読み方、慣用表現等を教えた。フランス語教師だからか、彼女は文法の要点を理解するのがとても上手く、それらを学校の生徒たちに説明し、ゲームをさせ、場つなぎで時々彼らが好きと言う日本のアニメを英語字幕つきで見せたと言う。
彼女の日本語クラスはかなりの好評だったようで、授業後も多くの生徒が日本の話をしていたり、次回の授業の内容は何かといろいろ聞いてきたり、別の高校教師は「生徒たちは私の数学の授業中でも日本の話ばかりしてくるわ」、とからかわれたり、日本の興味のある事柄を書かせるレポートを出したところ、彼女が知らない様々な日本文化や習慣などを多くの生徒が興味深く調べ上げ、彼らの熱意にびっくりしたというほどの人気ぶりだったらしい。
ど田舎の高校で、日本の授業が人気というのは、自分のことのように嬉しかった。来年も彼女の学校で日本の授業が行われるか不明だが、彼ら高校生たちがとても楽しんで日本の授業を受けていたのを聞くと、私も協力出来た事が嬉しかったし、他の多くの学校でも日本の授業が行われるといいなと思った。