アメリカに永住する2種類の日本人
日本にいた頃は周りに振り回されていたかのごとく、新しい情報や新商品、流行になどに乗り遅れないようにしようと、心のどこかであせっており、心の平安を感じることがなかなか出来なかったように思う。それは年齢やどこに住んでいたかにも影響するものの、精神的にも、物理的にも、アメリカで生活するようになってのんびりと、質素な生活を送れるようになったと思う。
例えばテレビを見る場合、日本だと見れば余計に疲れた。視聴者に不安をあおるようなニュース番組や情報番組が大変多く、見て楽しくなれるものはあまりなかった。また街を歩けば人と関わりあいを避けようとするかのごとく、あくせくと時間に追われる人々が周りにいると、自分にも多少の影響は受ける。知らぬ間にそういう人々の一人になってしまいかねない。
私が住む場所は、マンハッタンのような都会ではなく、かなりの田舎であるから、これも自分にかなり影響を受けた。アメリカの田舎暮らしは自分がなりたかった将来像に手助けをしてくれるほうに近く、周囲の人々や町並みがのんびりしているし、1980年代以前の日本で感じられた、人々の他人への親切心や心のつながりがここで感じられるから、自分もそういう風に感化を受ける。日本にいた頃には考えられなかったが、何にもないような日々が実は最高の日々のような気になってくる。
もっともっと、と欲深く何かを追うことが減り、周りの人々のように家族との時間、家での時間を最も大切にし、のんびり過ごす事が幸せであるように思えてくるようになる。スケジュール帳はアメリカに来てから持ったことがないし、流行を気にせず自分のしたい事をする、という周りのアメリカ人によくあるスタンスが、自分にも大変上手く行った。自分が幸福と思える基準となるレベルが自然と下がっていた事に気づき、多くの事柄に日本時代ほどストレスを感じることがなくなり、多くが受け入れられるようになった。
自分主体で周りの目を気にすることもなくなったし、多くの会社は残業しないし、人とつながっている感覚があり、心に余裕が大変持てるようになったのも、アメリカ生活のメリットになったと思う。人により、大都会が好きで、いつもあくせく動くほうが好きと言う人もいるだろうが、幸運にもアメリカの田舎での生活は、自分によく合う。
以前テレビで、アメリカ移住後半世紀以上永住している日本人が言うには、アメリカに永住しにくる日本人には2種類いる、一つは打ちのめされて日本へ帰る者、もう一つはどっぷり適応して現地の人間になる者だ、と言っていたが、幸運にもきっと私は後者の部類になれたかもしれない。