自然に囲まれたNY北部に住む日本人が、現地の習慣や価値観等、日本とのあらゆる違いを紹介します。アメリカ留学、移住、旅行等、アメリカに興味のある人向けです。

日本里帰りで受ける逆カルチャーショック

外国に長く住んでいると、逆カルチャーショックを受けることがある。久々に母国に里帰りすると、現在住む外国の価値観習慣に適応してしまっているため、母国のそれがまるで異文化に接しているような違和感を感じてしまう。生まれ育った母国の、その価値観習慣は理解できるはずだが、知らぬうちに現在在住する国のそれが自分の中で第一義となってしまい、新鮮さを覚え、時に理解に苦しみ、自分は一体何人なのだろうと、アイデンティティーが揺らぎ、心に不安を感じる人もいるかもしれない。
私も数年ぶりに日本に里帰りすることがあるが、例えば日本に到着するや否や、空港内で走る日本人をちらほら目にして驚き (アメリカでは滅多に建物内で走る人を見ない)、二列で順番待ちをしていると、流れが遅い列にいた日本人が、並べというから並んでいるのに、なぜ後から来た人が先にいけるの、どういうつもり?と係員にクレームを出している(アメリカではそういう光景をあまり見ないので、ああ日本に帰ってきたと実感し始める)。
また親が小さい子供を叱り、頭を叩いているのを見かける(アメリカでは目撃者に通報されて逮捕される可能性がある)。レストランでテーブルの上にあるボタンを押せば店員が来てくれる(アメリカではそんな店はほとんどない)。スーパーに行けば店内音楽が流れやけににぎやかで(アメリカではたいてい静かだ)、レジでは一点別に398円が一点、等と店員が読み上げる(アメリカではそんなことはしない)、軽四やスクーターが多くワオ!と思う(私の済む田舎では小型車をあまり見ないので)、ゴミの区別が細かく、決まった時間外に捨てると誰かが怒ってくる(私の住む所は燃えるごみとビン、カンの区別しかなく、ゴミの日前日夜から家の前に置いてもよい)。
4,5メートルしかない道幅でも、対向車と難なくすれ違える運転能力の高さ(アメリカはたいてい道幅が広いので、私はもう恐怖さえ感じる)、預金を引き出して数百円手数料を取られる(ただ呆れる)、店の店員はたいていにこやかだが、それ以外のサービス業の運転手やその他係員等は比較的ため口で横柄で、それが地域ならではの親密さを出すやり方かもしれぬが、人の二面性を見て怖くなった(アメリカでは公私でそんな豹変せずたいてい自然体なので)、買物や娯楽で来たのに駐車料金を取られる(アメリカではまずない)、冬はマスクする人が大変多いこと(アメリカではほぼゼロなので)、人を感知して動くエアコンなどアメリカより数歩先行く家電を見る、など。
日本にいた頃はそれらは当然のこととして分かっていたが、久方ぶりだとそんな事忘れていたので驚く。そして違いに気づくたび、それら日本の価値観習慣を当然のように理解し過ごしていた当時の私に出会えた感覚というか、開くきっかけがなかった記憶の引き出しから昔の自分と再会できたような感覚というか、デジャブというか、不思議な感覚を覚えることがある。要は慣れなので、生活の本拠があるアメリカに戻ると快適に感じるし、良くも悪くもそういう違いが観光名所巡りと同じくらいの思い出となるのである。